SCAMPER法とは?既存商品から新規事業アイデアを生む7つの質問と事例10選

SCAMPER法とは?既存商品から新規事業アイデアを生む7つの質問と事例10選

SCAMPER法とは、既存の商品・サービスに7つの質問を投げかけてアイデアを量産する発想フレームワークです。1971年にアメリカの教育研究家ボブ・エバール(Bob Eberle)が、アレックス・オズボーンの「オズボーンのチェックリスト」を再編して体系化しました。7つの頭文字(Substitute/Combine/Adapt/Modify/Put to other uses/Eliminate/Reverse)が示す視点で対象を問い直すと、ゼロベースで考えるよりも短時間で具体的なアイデアが出てきます。モスバーガーのライスバーガー、ダイソンのサイクロン掃除機、Netflixのストリーミング転換など、世界の新規事業はSCAMPERの視点で再解釈できます。本記事では7つの質問の具体例、ChatGPTとの組み合わせ、社内ワークショップの実践テンプレートまで解説します。

この記事でわかること

  • SCAMPER法の7つの質問の意味と、国内外10社の具体的な成功事例
  • 社内ワークショップで使える5ステップの実践ワークフローとテンプレート
  • ChatGPT×SCAMPERでアイデアを量産するプロンプトと、よくある失敗パターン

SCAMPER法とは?|7つの頭文字で既存商品から新しい発想を生むフレームワーク

SCAMPER法の定義と7つの要素

SCAMPER法は、既存の製品・サービス・プロセスに対して7種類の問いかけを順番に行い、新しいアイデアを導き出す発想法です。7つの頭文字はそれぞれ独立した「視点」として機能し、1つの対象を多角的に再構成します。

SCAMPER法の7つの視点|既存商品を中心に配置した概念図
頭文字英語日本語代表的な問い
SSubstitute代用する一部の材料・人・方法を別のものに置き換えたら?
CCombine組み合わせる他の商品・機能と組み合わせたら?
AAdapt応用する他業界の成功事例を転用したら?
MModify/Magnify/Minify修正・拡大・縮小形・大きさ・頻度を変えたら?
PPut to other uses他の使い道別の用途・別の顧客に提供したら?
EEliminate削減するどの要素を削ってもサービスは成り立つか?
RReverse/Rearrange逆転・再構成順序・役割・前提を逆転させたら?

誰がいつ開発したのか|ボブ・エバールとオズボーンのチェックリスト

SCAMPER法は、教育研究家ボブ・エバールが1971年の著書『SCAMPER: Games for Imagination Development』で体系化しました。原型は広告代理店BBDOの創業者アレックス・オズボーンが1953年に提唱した「オズボーンのチェックリスト(9項目)」であり、エバールが7項目に整理して教育現場向けに再編したものです。

SCAMPER法が有効な「発散フェーズ」とは

アイデア創出は「発散(アイデアを広げる)」と「収束(選び絞り込む)」の2フェーズに分かれます。SCAMPER法は発散フェーズ専用のツールで、質や実現性の評価は後工程に任せる前提で使います。発散中に批判や実現性の議論を持ち込むと、アイデアの量が半減してしまうので注意してください。

アイデア創出の2フェーズ|発散と収束、SCAMPERは発散フェーズ専用

なぜ今SCAMPER法が新規事業開発に有効なのか?|3つの理由

理由1: ゼロベース発想ではなく「既存資産の再構成」だから着手しやすい

新規事業に行き詰まる企業の多くは、「何か全く新しいものを生み出さねば」という思い込みで停滞しがちです。SCAMPER法は既存の商品・技術・顧客基盤という資産を起点にするため、中小企業や事業会社の新規事業部門でも発想の足場が確保できます。

理由2: 短時間(30〜60分)でアイデアを量産できる

7つの質問×最低3案で、1セッションあたり21案以上を量産できます。従来型のブレインストーミングは論点が拡散しやすく時間を浪費しがちですが、SCAMPER法は「問いの型」が決まっているため、会議の生産性が高まります。

理由3: ChatGPTなど生成AIと相性が良い

7つの質問は構造化されており、プロンプトに落とし込みやすい特徴があります。ChatGPTGeminiに「この商品についてSCAMPER法で7視点のアイデアを10案ずつ出して」と指示するだけで、初期アイデアの母数を一気に確保できます。

SCAMPER法の7つの質問と企業成功事例10選

① Substitute(代用する)|モスバーガーのライスバーガー

問い: 素材・人・プロセス・場所の一部を別のものに置き換えられないか?

モスバーガーのライスバーガーは、ハンバーガーの「バンズ(パン)」を「ライス」に置き換えた代表例です。和食文化との親和性が高まり、既存ハンバーガー市場とは異なる顧客層を獲得しました。素材の一部を差し替えるだけで、市場・顧客・ブランドが再定義される典型事例です。

② Combine(組み合わせる)|スマートフォン・Starbucks Rewards

問い: 複数の機能・サービス・業界を組み合わせられないか?

スマートフォンは携帯電話とパソコン、カメラ、ゲーム機、音楽プレーヤーを1台に統合したCombineの究極形です。StarbucksのStarbucks Rewardsはモバイルオーダーと決済・ポイントプログラムを組み合わせ、店舗体験とアプリ体験を一体化しました。Combineは応用範囲が広く、既存機能同士の掛け算から破壊的イノベーションが生まれます。

③ Adapt(応用する)|ドローンの農業転用

問い: 他業界・他分野の成功事例を自社に転用できないか?

軍事・空撮用途で普及したドローンは、農業分野に応用され、農地のセンシング、農薬散布、生育モニタリングに活用されています。技術そのものは同じでも、適用ドメインを変えるだけで新市場が開けるのがAdaptの本質です。

④ Modify / Magnify / Minify(修正・拡大・縮小)|ダイソンのサイクロン掃除機

問い: 形・大きさ・頻度・意味合いを変更できないか?

ダイソンは従来の紙パック式掃除機の「吸引力が落ちる」という課題に対し、サイクロン装置を採用することで構造を根本から修正しました。修正の対象は機能だけでなく、サイズ(Minify/Magnify)・頻度・使用シーンにも及びます。

⑤ Put to other uses(他の使い道)|Apple iPod・3Mの付箋素材

問い: 現在とは別の用途・別の顧客に提供できないか?

3Mのポスト・イット(付箋)は、本来は強力な接着剤を開発しようとして粘着力が弱い接着剤という失敗作から生まれました。弱い粘着力を「剥がせる」という別の価値として再定義した典型例です(R: Reverseの要素も含まれます)。AppleのiPodは既存のMP3プレーヤー技術を「音楽ライブラリを持ち歩く体験」に再定義しました。

⑥ Eliminate(削減する)|LCC・Swiffer

問い: どの要素を削除・簡素化してもサービスは成立するか?

LCC(ローコストキャリア)は機内食・座席指定・手荷物預かり等の付帯サービスを削り、価格優位性を確立しました。SwifferはP&Gが発売した掃除用品で、従来の掃除に必須だった「バケツ・水・雑巾の洗浄」という工程を削除し、使い捨てシートだけで床掃除が完結する体験を実現しました。Eliminateは「足す」のではなく「引く」発想で、機能過多の商品ほど効果が大きくなります。

⑦ Reverse / Rearrange(逆転・再構成)|Netflix・回転寿司

問い: 順序・役割・前提・方向性を逆転させられないか?

Netflixは1997年にDVDレンタル事業として創業し(月額サブスクリプションモデル導入は1999年)、「店舗に取りに来る」を「郵送する」、さらに「物を送る」を「ストリーミング配信する」と配送プロセスを逆転させ続けた結果、世界最大の動画配信事業者になりました。回転寿司は「客が選んで注文→提供」を「客の前に先に並べる」と順序を逆転させたビジネスモデルです。

7つの質問×事例×応用ヒント一覧

質問代表事例自社に適用する問い(例)
S: 代用ライスバーガー、植物性代替肉原材料の一部を地域素材・環境配慮素材に置き換えられないか?
C: 組合せスマートフォン、LEGO Movie自社商品+IoT、+サブスク、+教育を組み合わせられないか?
A: 応用ドローン農業、スタバのサードプレイス概念他業界(SaaS・ゲーム・エンタメ)の成功モデルを転用できないか?
M: 修正ダイソン掃除機、小型化家電サイズ・頻度・機能のどれかを極端に変えたら?
P: 他用途iPod、付箋、Kindleの法人研修利用別顧客・別シーン・別業界で使えないか?
E: 削減LCC、Swifferどの機能を削っても顧客体験は成立するか?
R: 逆転Netflix、回転寿司顧客と事業者の役割、提供順序を逆にできないか?

SCAMPER法の使い方|5ステップの実践ワークフロー

SCAMPER法の5ステップ実践ワークフロー|対象絞り込みから検証計画まで

Step 1: 対象となる既存商品・サービスを1つに絞る

複数商品を同時に扱うと議論が拡散しがちです。自社の主力商品1つ、または売上が鈍化している既存商品1つに対象を絞りましょう。

Step 2: 7つの質問シートを準備する(テンプレート)

下記のシートをA3用紙またはMiroFigmaなどのホワイトボードツールに展開し、参加者全員が同時に書き込める状態を作ります。

Step 3: 各質問に対し最低3案ずつ発散させる

1質問あたり5〜7分、7質問で計35〜50分が目安です。批判厳禁・質より量・突飛歓迎の3ルールを徹底してください。

Step 4: 出たアイデアを評価軸(実現可能性×インパクト)で絞り込む

21案以上の中から、実現可能性×インパクトの2軸マトリクスで上位3案を選定します。

Step 5: 上位3案を具体化し検証計画に落とし込む

3案について、ターゲット顧客・価値提案・最小検証方法(MVP)を1ページにまとめ、次の意思決定会議に上げます。

SCAMPERワークショップテンプレート

項目記入欄
対象商品・サービス(1つに絞る)
S: 代用のアイデア(3案)① ② ③
C: 組合せのアイデア(3案)① ② ③
A: 応用のアイデア(3案)① ② ③
M: 修正のアイデア(3案)① ② ③
P: 他用途のアイデア(3案)① ② ③
E: 削減のアイデア(3案)① ② ③
R: 逆転のアイデア(3案)① ② ③
絞り込み(上位3案)① ② ③

ChatGPTとSCAMPER法を組み合わせたアイデア量産術

基本プロンプトテンプレート(コピペ可)

あなたは新規事業開発の専門家です。以下の既存商品についてSCAMPER法を用い、
7つの視点(Substitute / Combine / Adapt / Modify / Put to other uses /
Eliminate / Reverse)からそれぞれ5案ずつ、合計35案のアイデアを提示してください。

【対象商品】
(商品名・主な機能・主要顧客を3行で記入)

【出力形式】
- 視点ごとに見出しを立てる
- 各案は「30文字以内のアイデア名」+「100字程度の説明」

7つの質問別に使う応用プロンプト

視点応用プロンプト例
S: 代用「この商品の主要な材料・人・プロセスを、環境配慮型のものに置き換える案を10個提案して」
C: 組合せ「この商品と、全く異なる業界(金融・エンタメ・教育)の商品を組み合わせる案を10個」
A: 応用「この商品を、高齢者市場/BtoB市場/海外市場に転用する案を10個」
E: 削減「この商品から最も削るべき要素を3つ挙げ、削った場合の顧客体験を描写して」
R: 逆転「この商品の『提供者と顧客の役割』を逆転させた場合のビジネスモデルを5つ」

生成AI活用の3つの注意点

  1. AIの一次アウトプットを鵜呑みにしないでください。一般論や既存事例の寄せ集めになりがちなので、人間側で自社固有の強み・制約によってフィルタをかけます。
  2. 業界・顧客・競合の前提を必ずプロンプトに含めましょう。文脈情報が少ないと「当たり前」の案しか出てきません。
  3. AIはあくまで「発散の補助輪」と捉えてください。収束・評価・意思決定は必ず人間が行います。

SCAMPER法を社内ワークショップで運用する実践ガイド

参加者構成(多様性の確保)

  • 人数は4〜8名が適正です(10名を超えるなら分科会に分けます)
  • 部門ミックスとして、企画・営業・開発・製造・カスタマーサポートから各1名以上を入れます
  • 年代ミックスで20代〜50代を混在させ、前提や常識を揺さぶります

タイムライン例(60分・90分・半日)

時間枠推奨構成
60分(最短)導入5分 → SCAMPER7問×5分=35分 → 絞り込み15分 → まとめ5分
90分(標準)導入10分 → SCAMPER7問×7分=49分 → 絞り込み20分 → 発表・まとめ11分
半日(3時間)導入20分 → ChatGPTで初期案生成30分 → SCAMPER発散70分 → 絞り込み30分 → MVP設計30分

若手・新メンバーを巻き込むファシリテーション3つのコツ

  1. 最初のアイデアはファシリテーターがあえて突飛な案を出します。「こんな変な案でもOK」という空気を最初に作るためです。
  2. 役職・年次順で発言させないこと。若手から順に、または付箋に書いて全員同時に提示するやり方が機能します。
  3. 「実現性」の議論は発散フェーズでは禁止です。収束フェーズまで批判を持ち込まないようルールを明示しましょう。

SCAMPER法でよくある失敗パターンと回避策

失敗1: 「とりあえず全部の質問に答える」で終わる

7つの質問を埋めることが目的化し、中身の浅い案が羅列される、という症状です。

回避するには、各質問に「最低3案」ではなく「自分が面白いと思う案を最低1案」というルールに変えます。量よりも熱量を優先する選択肢を用意しましょう。

失敗2: アイデアの評価・絞り込みをしない

発散して満足してしまい、出たアイデアが誰にも拾われず死蔵される、というパターンです。

回避策として、ワークショップの終了10分前に必ず「実現可能性×インパクト」のマトリクスで上位3案を選定してください。選定を翌週以降に延期しないのが重要です。

失敗3: 出たアイデアを誰も拾わず実行されない

絞り込んでも「検討します」で終わり、意思決定が宙に浮いてしまうケースです。

回避するには、ワークショップ前に「上位3案は○月○日の経営会議に必ず上程する」と意思決定のレールを敷いてから実施します。

SCAMPER法と他のアイデア発想法の違い|比較表

オズボーンのチェックリストとの違い

オズボーンのチェックリストは9項目、SCAMPER法は7項目で、SCAMPERはオズボーンを実務向けに簡略化・再編した発展形です。項目が少ないぶん実施時間が短く、社内ワークショップで使いやすくなっています。

ブレインストーミング・マインドマップとの使い分け

フレームワーク特徴向くシーン所要時間
SCAMPER法7つの問いで既存資産を再構成既存商品の改良・新規事業の種探し30〜90分
オズボーンのチェックリスト9つの問いで発想を刺激より多角的にアイデアを広げたい時60〜120分
ブレインストーミング自由連想、質より量テーマが抽象的で発散の起点を作りたい時30〜60分
マインドマップ中心テーマから放射状に関連要素を展開個人のアイデア整理・構造化15〜60分
TRIZ発明原理40+矛盾マトリクス技術課題・特許創出数時間〜数日

まとめ|SCAMPER法は「既存資産の棚卸し」から新規事業を生む最短ルート

SCAMPER法は、1971年にボブ・エバールが体系化して以来、半世紀にわたり新規事業・商品開発の現場で使われ続けています。その理由は、ゼロベースではなく既存資産の再構成から始めるという設計思想にあります。モスバーガー、ダイソンNetflixSwiffer3Mの付箋が示すように、大きなイノベーションの多くはSCAMPERの7視点で説明できます。

まずは自社の主力商品を1つ選び、60分のワークショップを開き、21案を量産するところから始めてみてください。ChatGPTを併用すれば、1人でも今日から着手できます。

SCAMPER法に関するFAQ

Q1. SCAMPER法は何分くらいで実施できますか?

A. 最短60分、標準90分、じっくり行う場合は半日(3時間)が目安です。7つの質問に各5〜7分、絞り込みに15〜20分を確保するのが効率的です。

Q2. 中小企業でも使えますか?

A. 使えます。モスバーガーの創業期や3Mの付箋誕生も、大規模な研究開発ではなく既存資産の再構成から生まれています。経営者+幹部3〜4名の少人数でも実施可能で、むしろ意思決定が早いぶん中小企業のほうが相性が良いケースもあります。

Q3. SCAMPER法とオズボーンのチェックリストは何が違いますか?

A. オズボーンのチェックリストが9項目、SCAMPERが7項目です。SCAMPERはボブ・エバールがオズボーンを実務向けに整理・再編した派生形で、項目数が少ないぶん短時間で実施しやすくなっています。

Q4. 一人でもできますか?

A. 可能です。一人で行う場合はChatGPTGeminiを「もう1人のブレスト相手」として使うことで、視点の偏りを補えます。ただしワークショップと比べて多様性が落ちるため、最終的には他者レビューを入れることをおすすめします。

Q5. BtoBサービスにも適用できますか?

A. 適用できます。BtoBの場合は「代用=顧客の業務プロセスを代替」「削減=顧客の工数削減」という切り口が特に有効です。SaaSの機能追加検討や、コンサルティングサービスの商品設計にも応用実績があります。

Q6. ChatGPTだけでSCAMPERを完結させてもよいですか?

A. 発散の初期段階までは問題ありません。ただし、最終的な意思決定・絞り込みは必ず人間が行うようにしてください。AIは自社固有の制約・戦略・競争優位を完全には把握できないため、評価フェーズには人間の判断が欠かせません。

Q7. アイデアが浅くなりがちなときの対処法は?

A. 対象を「商品全体」ではなく「商品の一部機能」「顧客の特定シーン」にさらに絞り込むと、具体的なアイデアが出やすくなります。また、異業種の成功事例(NetflixStarbucksLEGOなど)を事前に参加者に共有しておくと、「転用可能な前例」が増えてアイデアの深度が上がります。

この記事を書いた人
ZIDAI Notebook 編集部

新規事業開発支援、生成AIを活用したDX支援を実施する株式会社ZIDAIの事業開発、AI情報メディア「ZIDAI Notebook」。 多くの事業開発やAIを活用した開発を行ってきたBizDev、エンジニアの監修の元、情報をお届けします。