購買行動モデル6選比較|AIDMA・AISAS・DECAXを使い分ける完全ガイド

購買行動モデル6選比較|AIDMA・AISAS・DECAXを使い分ける完全ガイド

購買行動モデルとは、消費者が商品を認知してから購入・共有するまでの心理プロセスを段階化したフレームワークである。AIDMA(1920年代・サミュエル・R・ホール提唱)はマス広告時代の古典モデル、AISAS(2004年・電通提唱)はWeb時代の標準、DECAX(2015年・電通提唱)はコンテンツマーケティング時代の消費者起点モデルとして整理できる。本記事では6つの主要モデルを統一フォーマットで比較し、自社の商材・チャネルに合わせた選び方と、マーケティングファネルへの落とし込み手順を解説する。

この記事でわかること

  • 6つの購買行動モデル(AIDMA・AISAS・DECAX・AISCEAS・SIPS・ULSSAS)の構造と適用範囲
  • 商材・チャネル・関与度に応じた使い分けの5原則
  • マーケティングファネル設計に落とし込む実践4ステップ

購買行動モデルとは?マーケティングファネルとの違いをまず整理

購買行動モデルの定義

購買行動モデルとは、消費者がある商品・サービスを「知る」段階から「買う」「共有する」段階までに辿る心理・行動のプロセスを、複数のステップに分解して可視化したフレームワークである。

100年前のサミュエル・ローランド・ホールによるAIDMA提唱以降、メディア環境の変化に応じて新しいモデルが提唱されてきた。Web検索の普及、SNSの浸透、コンテンツマーケティングの台頭など、消費者の情報接触チャネルが変化するたびに、モデルも更新されている。

マーケティングファネル(認知→検討→購買)との関係

マーケティングファネルは「認知 → 興味 → 検討 → 購買 → ロイヤル化」といった段階の入れ物であり、購買行動モデルはその各段階で消費者がどう動くかを具体化したものと位置づけられる。

概念役割
マーケティングファネル認知→購買→共有までの段階構造そのもの
購買行動モデル各段階で起こる心理・行動の具体パターン
カスタマージャーニーマップ上記2つを自社商材・顧客に当てはめた個別設計図
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ファネル設計を「箱」とすると、購買行動モデルは「箱の中で起きる動き」を説明する道具である。

なぜ複数のモデルが存在するのか

メディア環境と消費者の情報行動が変わるたびに、既存モデルでは説明できない動きが現れたためである。マス広告中心のAIDMAは「検索」を扱えず、AISASは「コンテンツとの偶然の出会い」を扱いにくい。各モデルは時代背景とセットで理解する必要がある。

主要6モデル比較表|AIDMA・AISAS・DECAX・AISCEAS・SIPS・ULSSASの違い

モデル提唱者・年プロセス主な対象環境適合チャネル視点
AIDMAサミュエル・R・ホール / 1920年代Attention→Interest→Desire→Memory→Actionマス広告時代TV CM・新聞・雑誌・店頭POP企業視点
AISAS電通 / 2004年提唱・2005年商標登録Attention→Interest→Search→Action→ShareWeb検索時代検索広告・SEO・SNS・EC企業視点
DECAX電通 / 2015年Discovery→Engage→Check→Action→eXperienceコンテンツマーケ時代オウンドメディア・SEO・メルマガ消費者視点
AISCEASアンヴィコミュニケーションズ / 2005年Attention→Interest→Search→Comparison→Examination→Action→ShareEC・比較検討型比較サイト・口コミ・EC企業視点
SIPS電通佐藤尚之 / 2011年Sympathize→Identify→Participate→Share & SpreadSNS共感型Twitter/X・Instagram・LINE消費者視点
ULSSASホットリンクUGC→Like→Search1→Search2→Action→SpreadSNS拡散型UGC施策・SNS広告・検索消費者視点

各モデルの違いは「起点(誰が動き始めるか)」「経由するチャネル」「購買後の扱い方」の3点に集約される。AIDMAは企業の広告が起点、AISASは検索行動が起点、DECAXは消費者の偶然の発見が起点、ULSSASは他ユーザーの投稿が起点である。

AIDMA・AISAS・DECAX 3モデル比較フロー

AIDMAとは?マス広告時代の古典モデルを再評価する

5ステップの内訳

ステップ内容
Attention広告などで商品の存在を「認知」する
Interest商品に「興味・関心」を持つ
Desire「欲しい」という感情が湧く
Memory商品を「記憶」する
Action店頭などで「購入」する

1920年代に米国の販売・広告の実務家サミュエル・ローランド・ホールが提唱した、最も古い購買行動モデルである。

AIDMAが今も有効な3つの場面

  1. オフライン中心の商材:店頭POP、TV CM、新聞折込チラシなど、消費者が能動的に検索しない接触経路では今もAIDMAが機能する。
  2. 高関与・高単価商材:自動車・住宅・保険など、「Desire(欲求醸成)」と「Memory(記憶定着)」が長期にわたって重要な商材。
  3. 新カテゴリ商品:そもそも検索ワードが存在しない新カテゴリでは、認知形成と欲求喚起をマス広告で行う必要がある。

AIDMAの限界

「Search(検索)」と「Share(共有)」が組み込まれていないため、SNS時代の消費者行動を説明できない。Web前提の施策設計には別のモデルが必要となる。

AISASとは?検索と共有を組み込んだWeb時代の標準モデル

5ステップの内訳

ステップ内容
Attention広告・記事で商品を認知する
Interest商品に興味を持つ
SearchGoogle・Yahoo!・SNSで「検索」する
Action購入する
ShareSNS・口コミサイトで体験を「共有」する

2004年に電通が提唱し、2005年6月に商標登録されたWeb時代の代表モデルである。

AIDMAとの違い

AIDMAの「Desire(欲求)」と「Memory(記憶)」が、AISASでは「Search(検索)」と「Share(共有)」に置き換わっている。これは消費者が能動的に情報を取りに行き、購入後に体験を発信するというWeb・SNSの行動様式を反映している。

AISASが効くチャネル・商材

  • EC・D2C・SaaS:購買前検索が前提となる商材
  • アプリ・デジタルサービス:レビュー・口コミが購買判断に直結する領域
  • 検討期間が中程度の商材:家電・化粧品・ガジェットなど

検索広告とSEO、レビューマーケティングを統合的に設計する場面で最も使いやすい。

DECAXとは?コンテンツマーケティング時代の消費者起点モデル

5ステップの内訳

ステップ内容
Discovery自分にとって有益なコンテンツを「発見」する
Engage発信者と「関係」を構築する
Check商品・情報の信頼性を「確認」する
Action購入・行動する
eXperience「体験」を共有・発信する

2015年に電通デジタル・ホールディングス(現電通デジタル)の内藤敦之氏が提唱した、コンテンツマーケティング時代の購買行動モデルである。

なぜ「消費者視点」なのか

AIDMAやAISASの起点は企業の広告(Attention)だが、DECAXの起点は消費者自身の発見(Discovery)である。SEO記事・SNS・YouTubeなどで「自分から有益な情報を探した結果として商品に出会う」という行動を反映している。

企業が押し売りをするのではなく、有益なコンテンツで「見つけてもらい」、関係性を育てて購入につなげるという流れである。

DECAXが効くシーン

  • オウンドメディア・SEO中心の集客ferretLISKULのようなブログメディア戦略
  • SNS×コンテンツマーケNote記事やYouTubeチャンネル運用
  • BtoB SaaS・専門サービス:ホワイトペーパー・ウェビナー経由のリード獲得

中長期で関係性を構築するBtoB領域でも親和性が高い。

その他の押さえるべき3モデル|AISCEAS・SIPS・ULSSAS

AISCEAS(アイシーズ):比較・検討重視のEC型

AISASに「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」を追加した7段階モデル。比較サイト・口コミサイトを多用するECや家電・旅行予約などに適合する。

SIPS(シップス):SNS共感起点モデル

電通コミュニケーション・デザイン・センターの佐藤尚之氏が2011年に提唱。「Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share & Spread(共有・拡散)」の4段階で、SNSで共感を起点に購買が動く現象を説明する。

ULSSAS(ウルサス):UGC起点・SNS拡散型

ホットリンクが提唱したSNSマーケ専用モデル。UGC(ユーザー生成コンテンツ)を起点とし、Search1(SNS検索)→Search2(Google検索)の2段階検索を経て購入・拡散へ至る。日用品・コスメ・飲食店など、SNSでバズりやすい商材に適合する。

どの購買行動モデルを使うべきか?商材・チャネル別の選び方5原則

原則1: 商材の関与度で選ぶ

関与度推奨モデル理由
高関与・高単価(住宅・自動車・BtoB契約)AIDMA・AISCEAS・DECAX検討期間が長く、欲求醸成と比較プロセスが重要
中関与(家電・SaaS・化粧品)AISAS・AISCEAS検索と比較が購買判断の中核
低関与(日用品・食品)ULSSAS・SIPS衝動的・共感起点の購買が中心

原則2: 主要チャネルで選ぶ

  • オフライン中心:AIDMA
  • 検索エンジン中心:AISAS / AISCEAS
  • オウンドメディア・コンテンツ中心:DECAX
  • SNS中心:SIPS / ULSSAS

原則3: BtoB/BtoCで選ぶ

  • BtoB:DECAX(コンテンツ経由のリード獲得)+AISCEAS(比較検討の長期化に対応)
  • BtoC・EC:AISAS+AISCEAS
  • BtoC・SNSバズ型:ULSSAS+SIPS

原則4: 既存顧客との関係性で選ぶ

新規獲得が中心ならAIDMA・AISAS、既存顧客とのリレーション強化が中心ならDECAX(Engage)とSIPS(Participate)が活きる。

原則5: 単独ではなく組み合わせる

実務では1モデルで完結することは稀である。例えば「認知段階はAIDMA、検討段階はAISCEAS、購買後はDECAXのeXperience」と段階別に組み合わせるのが現実的である。

購買行動モデル選定フローチャート

マーケティングファネルへの落とし込み手順|中小企業の実践4ステップ

Step1: 自社の購買プロセスを書き出す

過去の受注・購入データから、典型的な顧客が「最初に接触した媒体」「検討で参考にした情報源」「購買決定の決め手」を時系列で書き出す。営業ヒアリングや顧客インタビューを5-10件実施するのが理想である。

Step2: モデルを当てはめてマップ化する

書き出した行動を、最も近い購買行動モデルのステップに紐付ける。BtoB SaaSなら以下のようなマッピングが典型例である。

ファネル段階顧客行動DECAX対応ステップ主要施策
認知SEO記事で発見Discoveryオウンドメディア記事
興味メルマガ登録Engageリードナーチャリング
検討製品比較・他社確認Check事例コンテンツ・ホワイトペーパー
購買商談・契約Actionインサイドセールス
ロイヤル化口コミ・紹介eXperience顧客成功事例・レビュー

Step3: 各段階のKPI・施策を設計する

  • Discovery段階:検索流入数・記事PV・SNSインプレッション
  • Engage段階:メルマガ登録数・LINE友だち数
  • Check段階:資料DL数・ウェビナー参加数
  • Action段階:商談化率・受注率
  • eXperience段階:NPS・紹介経由リード数

Step4: 効果測定と改善

3ヶ月運用後、各段階の通過率を測定し、ボトルネックとなっている段階の施策を見直す。「Discovery → Engage」の歩留まりが低ければ記事の質を、「Check → Action」が低ければ事例の説得力を改善する。

2026年・生成AI検索時代の購買行動モデルはどう変わるのか

ChatGPT・Perplexityでの「Search」の質的変化

ChatGPTPerplexityGeminiなどのAI検索の普及により、AISASの「Search」は「検索エンジンへのキーワード入力」から「AIへの自然言語プロンプト」へ変化している。プロンプトはキーワードの約5倍長く(平均23語)、複数のサブクエリに分解されて処理される(Query Fan Out)。

AI Overviewsとファネル設計への影響

GoogleのAI Overviewsは、簡潔な事実回答で済むクエリをAI上で完結させる。結果として、消費者がWebサイトに到達する前に意思決定の一部が終わるケースが増え、ファネルの上流(Discovery / Attention)をAI内で取りにいく必要が出てきた。

今後注目すべき新しい行動パターン

  • AI推薦経由のDiscovery:AI回答で「引用される」ことが認知の起点になる
  • 検索の二極化:AIで概要把握→人間が公式サイトで詳細確認、という二段構造
  • 共有先の多様化:SNSだけでなく、AIへの口コミデータ提供(レビュー記入)が新しい「Share」になる

DECAXの「Discovery」がAI内で起こる時代に入り、コンテンツの質と引用されやすさ(GEO/AEO対応)が決定的に重要になっている。

購買行動モデル活用でよくある3つの失敗

  1. 1モデルを絶対視する:AIDMAだけ、AISASだけで全施策を組み立てると、SNS起点や検索起点の動きを取りこぼす。
  2. モデルとファネルを混同する:購買行動モデルは「動きの説明」、ファネルは「段階の入れ物」。混同するとKPI設計が破綻する。
  3. 自社データを使わずモデル先行で設計する:実際の顧客行動を観察せず、教科書的なモデルだけで施策を組むと、現場の購買プロセスとずれる。Step1の「書き出し」を必ず行うこと。

まとめ|まずは1モデル選んでファネルを描き直す

購買行動モデルは6つすべてを覚える必要はない。自社の主要チャネル・関与度・BtoB/BtoCの3軸から1つを選び、ファネルを描き直すところから始めるのが最速である。

  • マス広告中心 → AIDMA
  • 検索中心 → AISAS / AISCEAS
  • コンテンツ中心 → DECAX
  • SNS中心 → SIPS / ULSSAS

そして2026年以降は、生成AI検索による「Discovery」と「Search」の質的変化を前提にした再設計が、すべての企業に求められている。

FAQ

Q1: AIDMAは時代遅れですか?

いいえ。マス広告・店頭販促・新カテゴリ商品の認知形成では今も有効である。古いから使えないのではなく、適合場面が限定されているだけである。

Q2: AISASとDECAXはどう使い分ける?

検索広告・EC・SEO中心ならAISASオウンドメディア・コンテンツマーケ中心ならDECAXを選ぶ。リード獲得後の関係構築を重視する場合もDECAXが有利である。

Q3: BtoBに最適な購買行動モデルは?

DECAX+AISCEASの組み合わせを推奨する。コンテンツ起点での発見と関係構築をDECAXで設計し、長い比較検討プロセスをAISCEASで補完する。

Q4: 中小企業でも全モデル覚える必要がある?

不要である。自社の主要チャネルに合致する1〜2モデルで十分である。本記事の「選び方5原則」に沿って絞り込むのが現実的である。

Q5: 生成AI時代に新しいモデルは生まれている?

2026年4月時点で「これがデファクト」と言える新モデルは確立されていない。一方で、DECAXの「Discovery」段階がAI推薦経由に置き換わるなど、既存モデルの入口の解釈が更新されている。

Q6: 購買行動モデルとカスタマージャーニーマップの違いは?

購買行動モデルは汎用的な動きのテンプレート、カスタマージャーニーマップは自社顧客に当てはめた個別設計図である。前者を土台に後者を作るのが標準的な手順である。

この記事を書いた人
ZIDAI Notebook 編集部

新規事業開発支援、生成AIを活用したDX支援を実施する株式会社ZIDAIの事業開発、AI情報メディア「ZIDAI Notebook」。 多くの事業開発やAIを活用した開発を行ってきたBizDev、エンジニアの監修の元、情報をお届けします。