マーケティング

ターゲティングのやり方|STP分析で成果を出すための手順とコツを解説

ターゲティングのやり方|STP分析で成果を出すための手順とコツを解説

マーケティング戦略において、「誰に売るか」を決めるターゲティングは、事業の成否を分ける最も重要なプロセスです。優れた商品でも、届ける相手を間違えれば全く売れません。

本記事では、STP分析の中核である「ターゲット分析のやり方」について、初心者の方でも実務ですぐに使えるよう、具体的な5つのステップと必須フレームワーク「6R」を用いて、事業戦略のプロが徹底解説します。

この記事でわかること

  • STP分析の要、「ターゲティング」を迷わず進める5つの実践ステップ
  • 市場選定で失敗しないための必須フレームワーク「6R」の評価基準
  • BtoB・BtoCの具体例で学ぶ、自社が勝てるターゲットの絞り込み方

ターゲティングの基礎|セグメンテーション後に行う意思決定プロセス

マーケティングの現場では「ターゲットを絞ると売上が下がるのではないか?」という不安をよく耳にします。しかし、戦略の基本は「選択と集中」です。まずは、ターゲティングという行為が持つ本当の意味と、その前段階であるセグメンテーションとの関係性を正しく理解しましょう。

セグメンテーションとターゲティングの明確な違い

セグメンテーションとターゲティングの明確な違い

STP分析(Segmentation, Targeting, Positioning)において、セグメンテーション(S)とターゲティング(T)はセットで行われますが、その役割は明確に異なります。

  • セグメンテーション(市場細分化)
    市場という大きなケーキを、様々な切り口(年齢、地域、行動特性など)で「切り分ける」作業です。ここではまだ「どれを食べるか」は決めず、あくまで市場を分類し、顧客のグループを可視化することに徹します。
  • ターゲティング(標的市場の選定)
    切り分けられた複数のグループ(セグメント)の中から、自社が最も勝ちやすく、利益を最大化できるグループを「選ぶ」作業です。つまり、「戦う場所を決める」という意思決定そのものです。

ターゲット分析のやり方において重要なのは、単に「20代女性」のように属性だけで選ぶのではなく、「どのような課題を持っている、どのグループを狙うか」まで解像度を高めることです。

合わせて確認
合わせて確認

ターゲット分析のやり方を理解するための前提

効果的なターゲット分析を行うためには、以下の2つの前提条件が必要です。

  1. セグメンテーションが適切に行われていること分類が雑であれば、選定も曖昧になります。人口統計的変数(年齢・性別)だけでなく、心理的変数(価値観・悩み)や行動変数(利用頻度)などで、市場が意味のある塊に分けられている必要があります。
  2. 自社の「武器(リソース)」を把握していること自社の予算、人員、ブランド力、技術力といったリソースの限界を知っておく必要があります。Amazonのような巨人と、地域密着の専門店では、狙えるターゲットの範囲が全く異なるからです。

なぜ「誰に届けるか」の選定がマーケティング成果を左右するのか

「全ての人」をターゲットにすると、誰の心にも響かない商品になります。経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報)は有限です。これらを分散させるのではなく、特定の顧客層に集中投下することで、以下のメリットが生まれます。

  • メッセージが鋭くなる
    特定の悩みに対してズバリ回答することで、広告の反応率(CTR/CVR)が劇的に向上します。
  • 競合との差別化
    大手が狙わないニッチな層や、特定のニーズに特化することで、競争優位性を築けます。
  • 顧客満足度の向上
    ニーズに合致した商品を提供できるため、リピート率やLTV(顧客生涯価値)が高まります。

ターゲット分析のやり方|市場から最適な顧客群を選ぶ5つのステップ

それでは、実務で使える具体的なターゲット分析のやり方を5つのステップで解説します。感覚や思い込みで決めるのではなく、客観的なデータと論理に基づいて進めることが成功の秘訣です。

①セグメントごとの市場規模・成長性・競争状況を整理する

まずは、セグメンテーションで分類した各グループについて、客観的な事実(ファクト)を収集します。ここではまだ絞り込まず、各セグメントの「魅力度」をフラットに評価するための情報を集めます。

  • 市場規模
    そのセグメントに属する人数や、想定される年間消費額はどれくらいか。
  • 成長性
    その市場は今後拡大するのか、縮小するのか(例:高齢者向け市場は拡大傾向、紙媒体市場は縮小傾向など)。
  • 競争状況
    すでに強力な競合他社が支配していないか(例:レッドオーシャンかブルーオーシャンか)。

この段階では、官公庁の統計データや業界レポート、検索ボリュームなどを活用して数値を洗い出しましょう。

②自社の強み・提供価値とセグメントのニーズの適合度を評価する

市場が魅力的でも、自社がそのニーズに応えられなければ意味がありません。これを「Product-Market Fit(PMF)」の予備段階として検証します。

  • ニーズの深さ
    そのセグメントが抱えている悩みは深刻か?(Nice to have ではなく Must have か)
  • 解決能力
    自社の商品・サービスで、その悩みを競合よりも上手く解決できるか?
  • ブランド適合
    自社の既存ブランドイメージと、そのターゲット層はマッチするか?

例えば、「高級路線のブランド」が「安さを求める学生層」をターゲットにしても、強みが活きず、ブランド毀損のリスクすらあります。

③収益性やリピート性などのビジネスインパクトを定量評価する

ターゲット分析において見落としがちなのが「儲かるかどうか」の視点です。売上が立っても利益が出なければ事業は継続できません。

  • 顧客獲得コスト(CAC)
    その層にアプローチするために、広告費や営業コストがどれくらいかかるか。
  • 顧客生涯価値(LTV)
    一度購入した後、継続してくれるか、アップセルが見込めるか。
  • 支払い能力
    そもそも商品単価に見合う予算を持っているか。

手間がかかる割に利益率が低いセグメントは、優先度を下げる勇気が必要です。

④ターゲット候補を複数比較し、優先順位をつける

ここまでの分析を基に、複数のセグメントを横並びで比較します。通常、完璧なセグメント(市場が大きく、競合がおらず、自社の強みが活かせる)は存在しません。そのため、優先順位付けが重要になります。

比較検討の例

  • セグメントA: 市場は巨大だが、競合が激しく、広告費が高騰しそう。
  • セグメントB: 市場は小さいが、競合が不在で、自社の技術が唯一無二の解決策になる。
  • セグメントC: 将来性は高いが、収益化までに時間がかかる。

初心者の場合、まずは「確実に勝てる小さな市場(セグメントB)」から入り、徐々に市場を広げていく戦略(ランチェスター戦略)が有効な場合が多いです。

⑤選定したターゲットが実行可能かをチェックし最終決定する

最後に、選んだターゲットに対して、現実的にマーケティング活動が実行可能かを確認します。

  • 到達手段はあるか:
    Web広告、SNS、展示会、DMなど、そのターゲットに情報を届ける具体的なチャネルが存在するか。
  • 社内理解:
    営業部門や開発部門が、そのターゲット選定に納得し、協力体制を築けるか。

ここまで確認して初めて、「ここをターゲットとする」という最終決定を下します。

ターゲティングで必ず使う「6R」|選ぶ基準を具体的に整理する

ターゲット分析のやり方において、選定の精度を劇的に高めるフレームワークが「6R」です。前述のステップをより厳密に評価するためのチェックリストとして活用してください。

6Rの要素日本語訳チェックすべき問い重要度
1. Realistic Scale市場規模事業が成立するだけの十分な母数(人数・売上規模)があるか?★★★
2. Rate of Growth成長性その市場はこれから伸びるか?少なくとも現状維持できるか?★★★
3. Reachability到達可能性物理的・地理的・言語的に、商品や情報を届けられるか?★★☆
4. Responsiveness反応の良さ広告や提案に対して、好意的な反応を示す層か?★★☆
5. Rival Presence競合状況勝ち目のない強豪がいないか?差別化できる余地はあるか?★★★
6. Rank / Ripple優先順位 / 波及効果周囲への影響力が強いか?(インフルエンサー的な役割など)★☆☆

①Realistic Scale(市場規模)|十分な売上が見込めるか

ターゲットを絞りすぎると、顧客数が少なすぎてビジネスが成り立たないリスクがあります。「ニッチ」と「需要がない」は違います。最低限、損益分岐点を超えるだけの売上が見込めるパイの大きさがあるかを確認します。

②Rate of Growth(成長性)|今後の伸びしろが期待できるか

現在は市場規模が小さくても、将来的に急成長するトレンドに乗っていれば、先行者利益を得られます。逆に、斜陽産業や縮小しているトレンドを選んでしまうと、どんなに努力しても成果を出すのは困難です。PEST分析などを併用して判断しましょう。

③Reachability(到達可能性)|広告・販路で確実に届けられるか

「ジャングルの奥地に住む富裕層」は魅力的かもしれませんが、商品を届ける物流網も、情報を届ける通信網もなければターゲットにはできません。Webマーケティングであれば、「検索キーワードが存在するか」「SNSを利用しているか」などが判断基準になります。

④Responsiveness(反応の良さ)|価値を受け入れる見込みが高いか

その商品カテゴリーに対して関心が高い層か、新しいもの好き(イノベーター)か、保守的かを見極めます。効果測定がしやすく、改善サイクルを早く回せるターゲットの方が、マーケティングの成功確率は高まります。

⑤Rival Presence(競合状況)|競合優位性を確保できるか

ターゲット分析において最も重要な視点の一つです。「市場規模が大きい」場所には必ず「強い競合」がいます。真正面から戦うのか、少し軸をずらして戦うのか。自社のリソースで勝てる見込みがある場所を選びましょう。

⑥ROI(投資回収性)|費用対効果が見込めるか

ここでの「Rank」は優先順位、あるいは「Return」としてROI(投資対効果)を指すこともあります。広告費や営業コストに対して、十分な利益が残るか。LTV(生涯顧客単価)が高いターゲットであれば、獲得コストが高くても正解となる場合があります。

具体例で学ぶターゲティング|選び方の判断基準と比較の考え方

概念だけでは分かりにくいため、BtoCとBtoBそれぞれの具体的なケーススタディを通して、ターゲット選定の思考プロセスを見ていきましょう。

BtoC事例:美容・食品・教育などのセグメント別の比較例

商材: 完全食(栄養バランスが整ったパン)

市場背景: 健康志向の高まりにより市場は拡大中だが、競合も多い。

【セグメント比較】

  1. 「ダイエット中の20代女性」
    • 評価: 市場は大きい(Scale◎)が、競合が非常に多く(Rival✕)、価格感度が高いため利益率が低い(ROI△)。
  2. 「多忙な30〜40代の独身ビジネスマン」
    • 評価: 食事時間を短縮したいニーズが強い(Responsiveness◎)。可処分所得が高く単価を上げやすい(ROI◎)。Web広告での到達も容易(Reachability◎)。
  3. 「高齢者の健康管理層」
    • 評価: 今後増えるが(Growth◎)、Webでの到達が難しく、既存の食事習慣を変えるハードルが高い(Responsiveness△)。

【決定ターゲット】

「多忙な30〜40代の独身ビジネスマン」

理由: 「時短」と「健康」の両立という強いニーズがあり、競合がダイエット訴求に偏っている中で、ビジネスパフォーマンス向上という切り口で差別化できるため。

BtoB事例:企業規模・課題ベースでターゲットを絞る手順

商材: クラウド型勤怠管理システム

市場背景: 法改正により需要増。大手システムがシェアを独占中。

【セグメント比較】

  1. 「従業員1,000名以上の大企業」
    • 評価: 契約単価は巨大だが、既存システムからの乗り換え障壁が高く、意思決定に時間がかかる。営業リソースが足りない。
  2. 「従業員50名未満のITベンチャー(リモートワーク中心)」
    • 評価: 複雑な機能は不要で、導入スピードを重視する。リモート特化の機能があれば響く(Responsiveness◎)。競合大手は中小企業向けのサポートが手薄(Rival◎)。
  3. 「地方の製造業」
    • 評価: IT化が遅れており市場はあるが、Webでのアプローチが難しく、訪問営業が必要なためコストがかさむ(Reachability✕)。

【決定ターゲット】

「従業員50名未満のITベンチャー(リモートワーク中心)」

理由: 自社のリソース(営業人員不足)を考慮し、Web完結で導入でき、かつ大手がカバーしきれていない「リモート特化」のニーズを狙うため。

選んではいけないターゲットの特徴(市場が小さい・到達不可など)

ターゲット分析のやり方を間違えると、以下のような「地雷セグメント」を選んでしまうことがあります。注意してください。

  • 「誰もがターゲット」症候群:
    「20代〜60代の男女」のように広すぎる設定。これはターゲティングしていません。予算が溶けるだけです。
  • 「空想のペルソナ」:
    「年収1000万で、時間があり、節約志向がある」といった、矛盾した属性や現実にはほとんど存在しない顧客像。
  • 「アプローチ手段がない層」:
    商品は良いが、その人たちがメディアを見ない、店舗に来ない、ネットを使わない場合、マーケティング施策が打てません。

この記事のまとめ|ターゲット分析のやり方で最重要となる6Rと選定基準

ターゲティングは、事業戦略における「航路図」を決める作業です。ここがブレると、その後の商品開発、価格設定、プロモーションの全てが的外れになります。最後に、本記事の要点をまとめます。

ターゲティング成功の核心は「優先順位付け」と「6Rの評価」である

ターゲット分析とは、単に顧客を選ぶだけでなく、「やらないことを決める(捨てる)」作業でもあります。魅力的な複数の選択肢から、自社のリソースで勝てる場所を「6R」の基準で冷静に判断し、優先順位をつけることが成功への最短ルートです。

STP分析で成果を出すために押さえるべき判断ポイント

  • セグメンテーションで市場を正しく分解する。
  • 自社の強みが活きる場所を探す(PMFの視点)。
  • 6R(特に市場規模、競合、成長性)でスコアリングする。
  • 感情ではなく、データと論理で「勝ち筋」のあるターゲットに絞り込む。

今日から使えるターゲット選定チェックリスト

これから新しい企画やマーケティング施策を考える際は、以下の項目をチェックしてください。

  • そのターゲットは、具体的か?(顔が思い浮かぶレベルか)
  • そのターゲット市場は、十分な売上規模があるか?
  • 競合他社に対して、自社が勝てる明確な理由はあるか?
  • そのターゲットに、情報を届ける具体的な手段(広告・販路)はあるか?
  • そのターゲットは、自社の商品に対してお金を払う能力と意思があるか?

ターゲティングのやり方をマスターすれば、限られた予算と人員でも、大きな成果を生み出すことが可能です。ぜひ、自社の事業に当てはめて、戦略を見直してみてください。

  • この記事を書いた人

ZIDAI Notebook 編集部

新規事業開発支援、生成AIを活用したDX支援を実施する株式会社ZIDAIの事業開発、AI情報メディア「ZIDAI Notebook」。 多くの事業開発やAIを活用した開発を行ってきたBizDev、エンジニアの監修の元、情報をお届けします。

-マーケティング