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クロスSWOT分析をわかりやすく解説|事業の解像度を上げる方法

クロスSWOT分析

SWOT分析を活用した経験がある方にとって、「次のステップ」となるのがクロスSWOT分析です。この手法を使うことで、事業の強みや弱みをより具体的に活かす方法が見えてきます。この記事では、クロスSWOT分析をわかりやすく説明し、その実践的な使い方を解説します。

この記事がおすすめな人

  • 自社の現状を、内部環境と外部環境から正確に把握したい事業責任者
  • SWOT分析だけでなく、クロスSWOT分析まで踏み込んで戦略立案に活かしたい方
  • 具体的な戦略オプション(積極的攻勢、差別化戦略など)を導き出したい方

1.クロスSWOT分析とは?基本をわかりやすく解説

クロスSWOT分析は、従来のSWOT分析を発展させた手法です。SWOT分析で得た「強み」「弱み」「機会」「脅威」を組み合わせ、実際の戦略やアクションプランに落とし込むプロセスを指します。

クロスSWOT分析とSWOT分析の違い

SWOT分析では、事業の内的・外的要因をリスト化することが目的ですが、クロスSWOT分析ではこれらを組み合わせて実際の戦略を構築します。
例えば、「強み」と「機会」を結びつけて最大の成果を狙う方法を考えることがポイントです。

クロスSWOT分析が必要な理由

従来のSWOT分析だけでは、リスト化された情報をどう使うかが明確にならない場合があります。クロスSWOT分析を導入することで、分析結果を具体的な行動に結びつけ、事業の解像度を飛躍的に高められます。

クロスSWOT分析のメリット

  • 実践的な戦略立案が可能
  • 強みと機会を最大化
  • 弱みを克服する具体策が見える化
  • 脅威への対策が事前に可能
望月裕也
望月裕也

クロスSWOT分析は、単なる分析で終わらせず、実行可能な戦略に直結させることができる点で優れています。SWOT分析の次の段階として活用を考える価値があります。

2.クロスSWOT分析の手順をステップごとに解説

クロスSWOT分析を行うには、明確な手順に沿うことが重要です。以下に、具体的なプロセスを詳しく説明します。

1. SWOT分析を完成させる

まずは、基本となるSWOT分析を行いましょう。企業やプロジェクトにおける強み・弱み(内部要因)、機会・脅威(外部要因)を洗い出します。

例:

  • 強み:高品質な製品提供、熟練の営業チーム
  • 弱み:認知度の低さ、予算不足
  • 機会:市場の拡大、新しい技術トレンド
  • 脅威:競合の増加、規制の変更
https://zidaiinc.com/method/2024/11/25/swot-beginner-guide

2. クロスSWOTマトリクスを作成する

SWOT分析の結果をもとに、クロスSWOTマトリクスを作成します。これは4つの象限に分け、それぞれの組み合わせを考えるものです。

  • SO(強み × 機会):積極活用戦略
  • WO(弱み × 機会):改善戦略
  • ST(強み × 脅威):防御戦略
  • WT(弱み × 脅威):リスク回避戦略

SO(強み × 機会):積極活用戦略

強みを発揮してチャンスを活かす積極戦略

積極活用戦略は、組織や個人が持つ「強み」を武器に、外部環境に存在する「機会」を最大限に活かし、成長や成功を目指すアプローチです。言ってみれば、「自分の得意技を活かして、最高のチャンスを掴む」という前向きな戦略です。

具体例:積極活用戦略が活きるケース

  1. 環境意識の高まりを活用したエコ製品の展開
    環境問題への関心が高まる中、優れた技術力を持つ企業がエコ製品を開発して市場に投入する。例えば、再生可能エネルギーに特化した技術を持つ企業が、太陽光発電システムや省エネ家電を開発することで、需要増加の波に乗る。
  2. 新興市場への進出
    ブランド力の強いファッション企業が、アジアやアフリカなどの成長市場に進出し、高品質かつスタイリッシュな製品で新たな顧客層を獲得する。
  3. デジタル技術を活用した新規事業
    IT分野に強みを持つ企業が、社会のデジタル化という機会を捉え、新しいオンラインサービスやAI技術を応用した製品を展開する。

WO(弱み × 機会):改善戦略

自社の強みで脅威に打ち勝つための改善戦略

改善戦略は、「弱み」に直面している組織や個人が、それを補ったり克服したりしながら、外部の「機会」を活かして成長を目指すアプローチです。イメージとしては、「自分の足りない部分を埋めながら、ちょうどいいチャンスを掴む」ような感じですね。

この戦略のポイントは、まず自分たちの「課題」や「苦手なところ」をしっかりと認識することです。そして、その弱点を改善するための具体的な行動を取りながら、同時に外部環境が提供するチャンスを活用していくことで、最終的には競争力を高めることが目標となります。

具体例:未熟さを補う新規参入企業の戦略

例えば、新しく市場に参入した企業が自社の技術力や経験不足を克服しようとするケースを考えてみましょう。成長が期待される分野や政府が後押ししている業界に進出することで、外部リソースを最大限活用します。具体的には:

  1. 政府の補助金や助成金
    デジタル化を進める企業が、国のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進政策を利用して補助金を受け取り、最新技術の導入や研修プログラムを活用する。
  2. 専門家や外部機関との連携
    自社に不足しているスキルを補うために、コンサルタントや外部企業と提携して経験値を高める。

ST(強み × 脅威):防御戦略

自社の弱みを克服して機会をつかむ防御戦略

防御戦略は、自らの「強み」をフルに活かして外部の「脅威」に立ち向かい、リスクや被害を最小化することを目的とした戦略です。これは積極的に成長を目指すというよりも、現状のポジションを守り抜き、競争や外部環境の変化に負けないための基盤を築くアプローチです。

この戦略では、強みを防御の「武器」として活用します。脅威に対してその武器をどう使うかが、結果を大きく左右するポイントになります。

具体例:強みを防御に活かすシナリオ

  1. ブランド力で差別化を図る
    ブランド力を活かして、競争の舞台を変える戦略も有効です。例えば、ファッション業界では、「安さ」ではなく「独自のデザインやブランドの信頼」を強調して競合との差を広げる動きが見られます。
  2. 高い技術力で競争を回避
    市場で価格競争が激化している状況でも、高品質な製品を提供し続けることで、安さだけが勝負の土俵から抜け出すことができます。たとえば、高性能のカメラを製造する企業が、廉価な競合品が増える中でも「画質や耐久性では負けない」という信頼感を武器にポジションを維持するケース。
  3. 知的財産権で競合を牽制
    自社が保有する特許や知的財産を活用して、他社の模倣を防ぎ、市場シェアを守る戦略も一例です。たとえば、医薬品メーカーが特許技術を盾に競合の参入を制限することで、安定した収益を確保する状況が該当します。

WT(弱み × 脅威):リスク回避戦略

大きな損失を防ぐためのリスク回避戦略

リスク回避戦略は、「弱み」と「脅威」が重なるような厳しい状況下で、被害や損失を最小限に抑えるための防御的なアプローチです。いわば「大嵐が過ぎるまでしっかり守りを固める」ような戦略ですね。目指すのは大胆な成長ではなく、現状を安全に保ちながら、最悪のシナリオを回避することです。

具体例:弱点と危機に対応する工夫

  1. コスト削減や事業縮小
    競争力が低い中小企業が、経済不況や市場の縮小といった外部の脅威に直面した場合。たとえば、採算が取れない事業から撤退し、リソースを生き残りに必要な分野に集中することで損失を最小化します。
  2. 外部支援の活用
    人的リソースが不足している企業が、法的規制の強化という外部の脅威に対処するため、外部の専門家やコンサルタントを雇い、コンプライアンスを確保する。これは、弱みを直接克服するのではなく、外部の力を借りて穴を埋める方法です。

3. 戦略を具体化する

クロスSWOTマトリクスに基づいて、実現可能な具体的な戦略を立案します。重要なのは、現実的かつ明確なアクションプランに落とし込むことです。

望月裕也
望月裕也

クロスSWOTマトリクスを作成する際、各戦略の優先順位を決めると実行しやすくなります。「影響力が大きい」「実現可能性が高い」ものを優先しましょう。

3.クロスSWOT分析を活用する具体的なシーン

クロスSWOT分析は、多岐にわたるビジネスシーンで役立ちます。ここでは具体的なケースを3つ挙げ、その有効性を説明します。

新規事業立ち上げ時

新たな市場やプロダクトを検討している段階では、SO戦略を中心に据えたクロスSWOT分析が特に有効です。
例: 強みである独自の技術を活かして、新しい市場に素早く参入する。

競合分析に基づく対策

競争が激しい市場で戦う場合、ST戦略が重要です。競合の脅威を強みによって打ち消すアプローチを検討します。
例: 強い営業力を活用し、競合のシェアを奪うキャンペーンを実施。

弱み克服のための改善施策

弱点を補強しながら、機会を活かすWO戦略も有効です。
例: 認知度向上のためのデジタルマーケティングを強化。

望月裕也
望月裕也

クロスSWOT分析は、様々な場面で応用できる柔軟性が特徴です。具体的な事業課題に適した戦略を選択することで、より大きな成果を目指せます。

4.クロスSWOT分析を効率よく進めるためのコツ

クロスSWOT分析を成功させるには、いくつかのポイントに留意する必要があります。

明確な目標設定を行う

まず、分析の目的を明確にします。目標があいまいだと、適切な戦略を立案することが難しくなります。

関係者を巻き込む

クロスSWOT分析は、チーム全員の知見を集めることでより効果的になります。例えば、各部門の意見を反映することで、実用的な戦略が生まれます。

データを活用する

定量的なデータをもとに分析を進めると、客観的かつ説得力のある戦略を構築できます。

望月裕也
望月裕也

分析結果は定期的に見直しを行いましょう。市場環境や内部状況が変化することで、新しい「機会」や「脅威」が生まれる可能性があります。

5.まとめ|クロスSWOT分析で事業の成功をつかむ

クロスSWOT分析は、SWOT分析の次のステップとして、具体的な戦略立案に役立つ強力な手法です。
「強み」と「機会」を活かし、「弱み」や「脅威」を克服する方法を明確にすることで、事業の成功確率を高めることができます。ぜひ、この記事で紹介した手順を参考に、クロスSWOT分析を活用してみてください。

  • この記事を書いた人
望月裕也

望月裕也

株式会社ZIDAI代表取締役。 営業代行会社・飲食店を起業、事業譲渡後、プログラミングを独学。DeNAを経て株式会社インタースペースのWeb広告事業にて仮想通貨グループを立ち上げ月売上0円から1億円まで伸ばし全社MVP獲得。新規事業推進室でプロダクトリーダーとなり複数の新規事業に携わる。2020年に日本初の有機JAS認証取得CBD原料の専門商社、株式会社WOWを共同創業しCOOに就任。コスメ、健康食品の商品開発からブランドの立ち上げ、マーケティング支援を多数実施。2023年株式会社boom now CSOに就任し、WEB3プロジェクト、生成AIリスキリング事業の立ち上げを実施。

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