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外観検査をAIに任せると何が変わるのか|人の目との違いと判断基準

外観検査をAIに任せると何が変わるのか|人の目との違いと判断基準

外観検査AIとは、カメラで撮った製品の画像をAIが見て、傷、欠け、異物などの良否を判定する仕組みです。AIに任せて変わるのは、「人が見ればわかる」という曖昧な線引きを、学習データで自動化できる点です。数値の閾値では決めにくい検査や、良品にばらつきがある検査で効果が出やすくなります。

ただし、AIは万能ではありません。キーエンスは、AIは人間のように勝手に学習して賢くなるわけではなく、100%の精度で不良品を判別できるわけでもないと説明しています。判定の精度は、学習に使う画像と、照明やカメラで撮る画像の質に左右されます。

東芝ライテックの今治事業所では、良品学習方式のAIを既存の検査装置に組み合わせ、良否判別の精度の目標値95%を達成し、目視作業の工数を約3分の1に減らしました。1つの事業所の1ラインでの結果であり、そのまま自社に当てはまるとは限りません。

「目視の負担が重い」「検査員が確保できない」「AIを入れて何が変わるのか分からない」。そう感じている工場長や品質保証の責任者は少なくありません。

この記事では、目視、従来の画像センサ、AIの違い、AIに任せて変わること・変わらないこと、東芝ライテックの実例、人の目との役割分担の決め方、導入前に確認する5つのことを、メーカーの公式ページと公的な調査をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 目視検査、従来の画像センサ、AIの違いと、AIに任せて変わること・変わらないこと
  • AIの2つの学ばせ方(OK/NG画像で学ぶ方式と良品学習)と、東芝ライテックの実例
  • 人の目とAIの役割分担の決め方と、導入前に確認する5つのこと

外観検査AIとは?目視や従来の画像センサと何が違うのか

外観検査とは、製品や部品の外観をチェックし、表面のキズ、欠け、シミ、異物、変形といった欠陥の良否を判定する工程です。キーエンスの解説(画像処理.com AI外観検査)によると、方法は検査員の目による目視検査が主流です。目視には、判断基準や検査数にばらつきが出る、コストと手間がかかる、細かい検査には拡大鏡や顕微鏡が必要になるといった課題があります。

画像認識による自動化も進んでいますが、キーエンスによると、ワークの向き、色、形状、角度で判定が左右され、最終的に目視が必要になる場合もあります。従来の汎用画像センサは、面積、色の濃さ、幅などを測り、数値の閾値で良否を決めます。AIは、事前の学習データをもとに、人の感覚に近い判断をします。

項目目視検査汎用画像センサ(数値の閾値)AI(学習データで判定)
判定の決め方検査員の目と経験面積・色の濃さ・幅などを測り、閾値で判定事前の学習データをもとに判定
得意な検査人の五感を使った判断(官能検査)ができる寸法など明確に判定できる検査。NGの根拠を数値で示せる人が見ればわかる線引き。形状が複雑、良品がばらつく、品種が多い検査
苦手な検査判断基準や検査数のばらつき。細かい検査に拡大鏡が必要閾値が曖昧な検査。良品にばらつきがあるとOK/NGの線引きが難しいNGの根拠を数値で示しにくい。学習にない状況の判断は難しい
外観検査の3つの方法。目視検査、汎用画像センサ、AIそれぞれの判定の決め方と得意・苦手をまとめた図
外観検査の3つの方法。判定の決め方と得意・苦手を、キーエンスの説明をもとにZIDAIが整理

外観検査などに使う画像認識AIは、生成AIと比べると導入が少ない状況です。中小企業基盤整備機構の中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)では、AIを導入済みの中小企業(n=322)が使っているAIの種類は、生成AIが82.6%で、画像認識AI(外観検査、不良品検出など)は11.2%でした。

AIに任せると何が変わるのか?4つの変化

AIに任せて変わるのは、検査の「判定の作り方」です。メーカーの説明から読み取れる変化を4つに整理します。

1. 「人が見ればわかる」線引きを、学習データで自動化できる

数値の閾値では決めにくい検査を、AIは学習データから判断します。キーエンスは、AIが得意な検査として、接着剤塗布後の外観検査のようにOK/NGの線引きが人の感覚に近いもの、アルミダイカスト品の鋳巣のように形状が複雑なもの、金属部品の打痕のようにNGが想定できず良品がばらつくもの、樹脂部品のキズのように品種が多いものを挙げています。

2. 良品のばらつきを吸収し、過検出が減る場合がある

過検出とは、良品を不良と判定してしまうことです。ルールベースでは、良品にばらつきがあると過検出が増え、そのたびに閾値を調整する手間が生じます。東芝ライテックの事例では、良品学習を取り入れて過検出が減り、目視作業の工数が約3分の1になりました。

3. 基準づくりの手間が、閾値の調整から、学習画像の用意に移る

ルールベースの検査では、どこまでチェック領域を広げればよいかに正解がないと、東芝ライテックの担当者は述べています。良品学習では、良品の画像を学習させて基準を作るため、東芝の説明では、ルールベースの開発と比べておよそ半分程度の開発工数で実現できました。手間がなくなるのではなく、画像を用意する作業に移ります。

4. 未知の不良に備えられる

東芝ライテックでは、既知の不良を検出する既存の検査装置では想定外の不良を防げず、実際に客先へ流出させてしまったことが、AI導入のきっかけでした。良品学習は、良品の範囲から外れたものを不良と判断するため、未知の不良にも対応しやすいと説明されています。

AIに任せても変わらないこと

変わらないこともあります。

変わらないこと内容
良否の基準は人が決める何をNGとするかを教えるのは人。間違ったOK/NG画像を覚えさせると、AIの判定も間違う
画像の質が結果を左右する高精度な判定には、良い画像で学習させることが重要。照明やカメラの選定が欠かせない
根拠の見えにくさAIはNGと判定した根拠を数値で示しにくい。数値での説明が必要な検査では、ルールベースとの併用を検討する
100%ではないAIは万能ではなく、学習にない状況では間違った結果を出す恐れがある

AIの学ばせ方は2通り:OK/NG画像で学ぶ方式と良品学習

外観検査AIには、大きく2つの学ばせ方があります。どちらを選ぶかで、必要な画像と得意な場面が変わります。

キーエンスが説明するのは、良品(OK)と不良(NG)の画像を人が選んで学習させる方式です。最低でも数十枚のOK/NG画像が必要とされています。東芝が採用するのは、良品学習方式です。複数の良品画像から良品の範囲を学び、そこから外れたものを不良と判断します。

AIの学ばせ方は2通り。OK/NG画像で学ぶ方式と良品学習方式で、学ばせるもの、向いている場面、気をつける点を比べた図
AIの学ばせ方は2通り。キーエンス・東芝の記載をもとにZIDAIが整理(一部は整理を含みます)
項目OK/NG画像で学ぶ方式良品学習方式
学ばせるもの良品と不良の画像(人が選ぶ)良品の画像のみ
向いている場面不良の種類が決まっていて、種類ごとに見分けたい不良が少ない、未知の不良を流出させたくない
気をつける点学習にない状況は間違う恐れ。不良画像が集めにくいことがある良品のばらつきをどこまで許すかで過検出が変わる

向いている場面と気をつける点の一部は、ZIDAIによる整理です。どちらか一方に決める必要はなく、検査の目的で使い分けたり、東芝ライテックのように既存の検査装置と組み合わせたりします。

実例:東芝ライテック今治事業所は、何を変えたのか

東芝デジタルソリューションズの導入事例(東芝ウェブサイト、2025年3月の取材をもとにした記事)から、東芝ライテック今治事業所の車載用ソケットLEDの製造ラインを取り上げます。

東芝デジタルソリューションズの導入事例ページ。AIによる良品学習方式を既存の外観検査装置に適用し、未知の不良検出を短期間で実現した東芝ライテックの事例
東芝デジタルソリューションズの導入事例ページ。良品学習方式のAIを既存の外観検査装置に適用した東芝ライテックの事例(出典: 東芝デジタルソリューションズ 導入事例(東芝ライテック株式会社 今治事業所)、2026年9月20日に閲覧)

導入前の課題

今治事業所は、2021年から自動外観検査装置を導入し、100台を超える規模の画像処理システムで各工程の検査を自動化してきました。それでも、検査対象になっていなかった部分で未知の不良が発生し、実際に客先へ流出しました。客先に出向いて再検査するコストがかかるうえ、顧客の信用を失うおそれもありました。ルールベースの装置では拡張が難しく、どこまでチェック領域を広げればよいかも決められませんでした。

何をしたのか

既存の検査装置に、良品学習方式の「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」を組み合わせました。2024年から運用を始め、現在は規格品を対象に組立4号機で使っています。良品学習には約1,000枚の良品画像を使い、数百枚の良品画像の学習は約2時間でできたと説明されています。

導入後の結果

東芝ライテック今治事業所の導入結果。良否判別の精度は目標の95%を達成、目視作業の工数は約3分の1、開発の工数はルールベースの約2分の1
東芝の事例記事に記載された数値をもとにZIDAIが作成。1事業所・1ラインの結果です
  • 良否判別の精度は、目標値の95%を達成
  • 過検出が減り、目視作業の工数を約3分の1に圧縮。その分の人員を他の工程に回せる
  • 開発の工数は、ルールベースと比べておよそ半分程度
  • イニシャルコストを約2分の1に抑えられたと記載

この事例を読むときの注意

3つの点に注意が必要です。1つ目は、メーカーが公開した導入事例で、東芝の製品の紹介を兼ねていることです。2つ目は、1つの事業所の1ラインの結果であり、対象は車載用ソケットLEDに限られることです。3つ目は、精度95%の測り方(何を分母にした数字か)が記事に書かれていないことです。自社の検査で同じ数字になるとは限りません。

進め方は参考になります。既存の設備を作り替えず、良品の画像だけで学習させ、不良が少ない現場でも未知の不良に備えた点です。

AI外観検査でよくある誤解と、うまくいかない原因

キーエンスは、AIによる外観検査に対する期待として、2つの誤解を挙げています。「AIは、人間のように勝手に学習して賢くなっていく」と「AIを活用すれば100%の精度で不良品を判別できる」です。

実際には、学習に使う画像は人が選び、AIはその画像を参考に判定します。そこにない状況の判断が難しく、間違った結果を出すおそれがあります。間違ったOK/NG画像を覚えさせれば、判定も間違います。判定精度を高めるには、人間に教えるように、どこまでを良品、どこからを不良とするかを教え込みます。

うまくいかない原因として、キーエンスは次の点を挙げています。

  • 学習に必要な大量の画像データが手に入らない
  • 学習させたい不良が、撮った画像に写っていない
  • 最適なソフトや判定ルールの選定、学習画像の用意に手間がかかる
  • 期待したほどの判定精度が出ない

キーエンスの説明では、高精度な判定には良い画像が必要で、カメラ側の位置補正や前処理、特殊な撮像技術で、学習に必要な枚数を減らせるとされています。これはメーカーの説明であり、条件によって結果は変わります。

人の目とAIの役割分担をどう決めるか

役割分担を決めるときは、まず「見逃し」と「過検出」を分けて考えます。見逃しは、不良品を良品として通してしまうことで、顧客への流出につながります。過検出は、良品を不良と判定することで、確認の手間や歩留まりの悪化につながります。どちらを優先するかで、判定の厳しさが変わります。

判断の観点汎用画像センサ(ルールベース)が向くAIが向く
判定の基準寸法など、数値で明確に決められる「人が見ればわかる」など、数値で線引きしにくい
良品のばらつきほとんどない大きい
不良の想定種類を想定できる想定しにくい(未知の不良が怖い)
品種の数少ない多い(登録に時間がかかる)
NGの根拠の説明数値で示す必要がある数値の説明は必須ではない

この表は、キーエンスの「適した外観検査」の記載をもとに、ZIDAIが観点別に整理したものです。どちらにも当てはまる場合は、東芝ライテックのように、既存の装置にAIを組み合わせる方法があります。AIが一次判定をして、迷うものだけを人が見る運用にすれば、目視の負担を減らしながら、最終確認は人が担えます。

導入前に確認する5つのこと

導入前に、次の5つを確認します。5つの確認事項は、メーカーの説明をもとにしたZIDAIの整理です。

確認すること具体的には
1. 何をNGとするか良品と不良の基準を、限度見本や写真で決める。基準が人によって違えば、AIも迷う
2. 不良が画像に写るか照明とカメラで、狙った不良が写るかを先に確かめる
3. 学習用の画像を用意できるか良品だけでよいか、不良も必要か。数はどれくらい集められるか
4. 見逃しと過検出の許容水準どちらを、どこまで許すかを決める
5. 誤判定の見直しと再学習の担当誰が、どの頻度で見直すか。現場で追加学習できる体制を作れるか

AIの導入全体の進め方は、生成AI導入は何から始めるべきか?経営者の最初の90日でやること7つで解説しています。

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まとめ

外観検査をAIに任せて変わるのは、「人が見ればわかる」線引きを、学習データで自動化できる点です。良品のばらつきを吸収して過検出が減り、未知の不良にも備えられます。変わらないのは、何をNGとするかを決めるのが人であること、画像の質が結果を左右すること、100%ではないことです。

進めるときの要点は3つです。検査の基準を先に決めること、不良が画像に写るかを確かめること、見逃しと過検出のどちらを優先するかを決めることです。東芝ライテックのように、既存の設備を活かして、良品の画像から始める方法もあります。

「自社のどの検査工程がAIに向くのか」を、外観検査を含む業務の一覧から整理したい場合は、ZIDAIのAIアセスメントで、業務の一覧から削減時間と金額の試算、最初の90日の計画までを1冊のレポートにまとめています(10万円・税別、従業員50名以上の企業が対象)。まずは、検査で「何をNGとするか」の基準を書き出すところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 外観検査AIとは何ですか?

カメラで撮った製品の画像をAIが見て、傷、欠け、異物などの良否を判定する仕組みです。従来の画像センサが面積や色の濃さなどの数値の閾値で判定するのに対し、AIは事前の学習データをもとに、人の感覚に近い判断をします。

Q2. AIは、人の目より正確ですか?

一概には言えません。キーエンスは、AIは万能ではなく、100%の精度で不良品を判別できるわけではないと説明しています。目視検査は判断基準や検査数にばらつきが出る一方、AIは学習にない状況の判断が難しく、間違うおそれがあります。東芝ライテックの事例では、良否判別の精度の目標値は95%でした。何をもって正確とするかは、見逃しと過検出の許容水準とあわせて決めます。

Q3. 不良品のデータがなくても始められますか?

良品学習方式なら始められます。東芝は、複数の良品画像から良品の範囲を学び、そこから外れたものを不良と判断する方式を採用しており、不良画像の分析は不要だと説明しています。一方、OK/NG画像で学ぶ方式では、最低でも数十枚のOK/NG画像が必要です。

Q4. 学習用の画像は何枚必要ですか?

方式と対象によって変わります。キーエンスは、OK/NG画像で学ぶ場合に最低でも数十枚と説明しています。東芝ライテックの事例では、約1,000枚の良品画像を使い、数百枚の学習は約2時間でした。画像の質(照明、カメラ、位置補正)でも必要な枚数は変わるため、実際の製品で試して確かめます。

Q5. AIを入れると、検査員は不要になりますか?

不要にはなりません。東芝ライテックは、目視作業の工数が約3分の1になり、その分の人員を他の工程に回せたと述べています。ただし、何をNGとするかの基準づくり、誤判定の見直し、再学習は、人が担います。キーエンスも、判定精度を高めるには人間のように教育していく必要があると説明しています。

Q6. 従来の画像処理装置は、入れ替える必要がありますか?

必ずしも必要ではありません。東芝ライテックは、すでに導入していた市販の画像処理システムに、良品学習方式のAIを組み合わせて、新たな設備を追加せずに検出精度を上げました。キーエンスも、AIとルールベースのどちらも使える製品を紹介しています。数値での根拠の説明が必要な検査では、ルールベースとの併用が向きます。

この記事を書いた人
ZIDAI Notebook 編集部

新規事業開発支援、生成AIを活用したDX支援を実施する株式会社ZIDAIの事業開発、AI情報メディア「ZIDAI Notebook」。 多くの事業開発やAIを活用した開発を行ってきたBizDev、エンジニアの監修の元、情報をお届けします。

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