MBIとは?MBOとの違いと事業承継で迷わない5つの判断基準

MBIとは?MBOとの違いと事業承継で迷わない5つの判断基準

MBI(マネジメントバイイン)とは、投資家やファンドが企業を買収した後に外部から経営の専門家を送り込み、経営の立て直しや企業価値の向上を目指すM&A手法です。一方のMBO(マネジメントバイアウト)は、社内の現経営陣が自ら株式を買い取って経営権を握る手法です。

両者の最大の違いは「誰が経営を担うか」にあります。MBIは外部の経営者、MBOは内部の現経営陣。後継者不在率が50%を超える現在、この2つのスキームは事業承継の有力な選択肢になっています。

この記事では、MBIとMBOの違いを比較表で整理し、それぞれのメリット・デメリット、そして自社にどちらが適しているかを見極めるための5つの判断基準を解説します。

この記事でわかること

  • MBIとMBOの違いを定義・目的・買収主体の3軸で理解できる
  • MBIの3つのスキーム(実施手法)と活用場面がわかる
  • 自社の事業承継にどちらが適するか、5つの判断基準で見極められる

MBI(マネジメントバイイン)とは?基本の仕組みを解説

MBIの定義と目的

MBI(Management Buy-In)とは、投資ファンドや金融機関が対象企業の株式を取得して買収し、外部から招聘した経営の専門家(プロ経営者)に経営を委ねるM&A手法です。

MBIの最終的な目的は、経営体制の刷新によって企業価値を向上させ、保有する株式を売却してキャピタルゲインを得ることにあります。技術力やブランド力を持ちながら経営がうまくいっていない企業や、優秀な人材・設備が十分に活かされていない企業がMBIの対象となります。

MBIが実施される3つの場面

MBIは主に以下の3つの場面で実施されます。

  1. 不採算事業の立て直し。既存経営陣では踏み切れない事業の「選択と集中」や構造改革を、外部の経営者が客観的な視点で実行するケースです。既存経営陣には事業への「思い入れ」がある分、不採算部門からの撤退判断が難しくなる傾向があります。
  2. 経営人材の不足。エンジニア出身の創業者など、専門分野には強いものの経営全般に課題を抱える場合です。財務・マーケティング・組織運営に長けた外部経営者を送り込み、企業の成長を加速させます。
  3. 後継者不在の事業承継。親族にも社内にも後継者候補がいない場合、投資ファンドが買収し、外部の適任者を経営者として迎え入れます。帝国データバンクの調査(2025年)によると、日本企業の後継者不在率は50.1%。MBIの活用場面は年々広がっています。

MBIとMBOの違いとは?【比較表で整理】

MBOの基本的な仕組み

MBO(Management Buy-Out)とは、現在の経営陣が自社の株式を既存株主から買い取り、オーナー経営者として独立した経営体制を構築するM&A手法です。

上場企業の場合は非公開化(ゴーイングプライベート)の手段として使われることが多く、中小企業の場合は親族外承継の手法として活用されます。MBOでは、経営陣がSPC(特別目的会社)を設立し、金融機関からのLBOローンやファンドからの出資を組み合わせて買収資金を調達するのが一般的です。MBOの詳細はMBO(マネジメント・バイアウト)とは?で解説しています。

合わせて読みたい

MBI・MBO・LBO・EBO 4手法の違い一覧

M&Aにはさまざまなスキームがあり、混同しやすい手法を比較表で整理します。

項目MBIMBOLBOEBO
正式名称Management Buy-InManagement Buy-OutLeveraged Buy-OutEmployee Buy-Out
買収主体外部の経営者・投資家現経営陣買収企業(問わない)従業員
分類の軸「誰が経営するか」「誰が買うか」「どう資金調達するか」「誰が買うか」
主な目的経営刷新・企業再建経営の独立・継続少ない自己資金での買収従業員による事業継続
資金調達ファンド・金融機関自己資金+LBOローン対象企業資産を担保に借入自己資金+金融機関融資
経営の連続性低い(経営陣が交代)高い(経営陣が継続)手法による中程度
典型的な活用場面事業再生・後継者不在非公開化・親族外承継大型買収中小企業の従業員承継
MBIとMBOのスキーム比較フロー図

LBOは「資金調達の方法」を指す用語であり、MBIやMBOと組み合わせて使われることも多い点がポイントです。たとえば「MBOをLBOファイナンスで実施する」といった形で、2つのスキームが同時に使われるケースは珍しくありません。LBOの仕組みはLBOとは?少ない資金で大型買収ができる仕組みで詳しく扱っています。

合わせて読みたい

MBIの3つのスキーム(実施手法)

MBIの実施方法は大きく3つに分類されます。

スキーム①:プロ経営者の派遣型

最も一般的なMBIの手法です。投資ファンドが対象企業を買収した後、ファンドのネットワークを通じて外部のプロ経営者を選定し、CEOやCOOとして派遣します。

ファンド側が経営者の選定・派遣を主導するため、対象企業のオーナーは経営者探しの負担から解放されます。PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)が投資先にCxOを送り込む形がこれに該当します。

合わせて読みたい

スキーム②:ファンドと経営者の共同出資型

経営能力を持つ個人がファンドと共同で出資し、対象企業を買収するスキームです。経営者自身も資金を拠出するため、経営へのコミットメントが高い点が特徴です。

近年日本で注目されている「サーチファンド」がこの形態に近く、経営者候補(サーチャー)が自ら買収先を探し、ファンドの資金を活用して買収・経営を行います。

スキーム③:買収先主導の経営者招聘型

買収先の企業自体が主体となり、ファンドの支援を受けながら外部の経営者を招き入れるスキームです。現経営陣では対応が難しい新規事業への転換や、大幅な経営方針の変更が必要な場合に選択されます。

3つのスキームのうち、①が最も多く採用されています。どのスキームでも、外部経営者の選定と、既存組織への円滑な受け入れが成功のカギを握ります。

MBIのメリット・デメリット

MBIの4つのメリット

  1. 企業価値の向上が見込める。外部の経営専門家が客観的な視点で経営資源を再配置し、十分に活かされていなかった技術・人材・設備の潜在力を引き出します。
  2. 経営の「選択と集中」を実行しやすい。社内のしがらみがない外部経営者だからこそ、不採算事業からの撤退や組織再編といった難しい判断を迅速に下せます。
  3. 後継者問題を解決できる。親族にも社内にも適任者がいない場合でも、投資ファンドが外部から経営者を探してくるため、オーナーが自ら後継者を見つける必要がありません。
  4. 資金力のある経営が可能になる。ファンドの資金と経営支援ネットワークを活用できるため、自社単独では手が届かなかった成長投資や事業拡大に取り組めます。

MBIの3つのデメリット・注意点

  1. 従業員の反発・混乱が起きやすい。外部から突然新しい経営者が来れば、従業員は不安を感じます。経営方針の急激な変更は組織の求心力を低下させるリスクがあります。
  2. 外部経営者の内部情報不足。業界慣行や社内の人間関係、取引先との信頼関係など、外部からは見えにくい情報を短期間で把握しなければなりません。この理解不足が意思決定のミスにつながることがあります。
  3. 顧客・取引先の離反リスク。オーナー個人の信用で成り立っていた取引関係が、経営者の交代によって見直される場合があります。中小企業では、オーナーの人脈が事業の根幹を支えているケースも少なくありません。

MBOのメリット・デメリット

MBOの4つのメリット

  1. 経営の連続性が保たれる。現経営陣がそのまま経営を続けるため、事業方針や企業文化に大きな変化が生じません。従業員・取引先との関係も維持しやすくなります。
  2. 社内事情に精通した経営ができる。業界知識、社内の人間関係、顧客との取引経緯など、長年蓄積した情報をそのまま経営に活かせます。
  3. 従業員の雇用を守りやすい。外部への売却と比べて従業員の不安が少なく、組織のモチベーション維持につながります。
  4. 意思決定のスピードが上がる。外部株主や親会社への説明・承認プロセスが不要になり、経営判断を迅速に実行できます。

MBOの3つのデメリット・注意点

  1. 買収資金の調達が大きなハードル。経営陣個人の資力には限りがあるため、多くの場合LBOローンやファンド出資で資金を調達します。この借入が財務を圧迫し、成長投資の余力を削ぐことがあります。
  2. 経営の変革が起きにくい。既存の経営陣が継続するため、従来の延長線上の経営に留まりやすく、抜本的な改革が必要な局面では弱点になります。
  3. 利益相反のリスク。買い手(経営陣)と売り手(株主)の間に利益相反が生じる構造があり、取引価格の公正性を担保するための第三者委員会設置や株価算定が必要です。

MBIとMBOどちらを選ぶべき?5つの判断基準

「自社にはMBIとMBOのどちらが合っているのか」。この問いに対する答えは、企業の状況によって異なります。以下の5つの基準に照らして検討してください。

判断基準①:社内に経営を担える後継候補がいるか

最も重要な判断基準です。社内に経営能力と意欲を兼ね備えた候補者がいればMBOが有力です。候補者がいない、あるいは候補者はいるが経営経験が不足している場合は、MBIで外部のプロ経営者を迎える選択肢が現実的になります。

判断基準②:経営の抜本改革が必要か

業績が伸び悩んでいる、市場環境が大きく変化している、不採算事業の整理が必要。こうした状況では、社内のしがらみがないMBIの外部経営者の方が思い切った改革を実行しやすくなります。現在の事業が堅調で、経営方針を大きく変える必要がなければMBOが適しています。

判断基準③:買収資金の調達手段はあるか

MBOでは経営陣自身が買収資金を用意する必要があります。LBOローンを活用するのが一般的ですが、企業の財務状況や将来キャッシュフローによっては十分な借入ができない場合もあります。MBIであれば投資ファンドが買収資金を拠出するため、経営陣個人の資金力に左右されにくいという違いがあります。

判断基準④:従業員・取引先への影響をどう考えるか

従業員の雇用維持や取引先との関係継続を最優先にするならMBOが有利です。顔なじみの経営陣が続投するため、組織の混乱を最小限に抑えられます。一方、MBIでは外部経営者の着任に伴う摩擦が避けられません。ただし、丁寧なPMI(統合プロセス)の設計で軽減は可能です。

判断基準⑤:オーナーの関与をどこまで残したいか

MBOでは元オーナーが顧問や相談役として一定期間関与し、引き継ぎを支援するケースが多くあります。MBIの場合、ファンド主導で経営体制が刷新されるため、元オーナーの関与は限定的になる傾向があります。引退後も会社に関わりたいのか、完全に手を離したいのか、オーナー自身の意向も判断に影響します。

判断基準MBIが向いている場合MBOが向いている場合
後継候補社内に適任者がいない社内に経営意欲のある幹部がいる
経営改革抜本的な改革が必要現行路線の継続で十分
資金調達ファンドの資金力を活用したい経営陣+LBOローンで調達可能
組織への影響多少の混乱を受容できる雇用維持・安定を最優先
オーナーの関与完全に退きたい引き継ぎ期間を設けたい

なぜ今MBI・MBOが注目されるのか?事業承継の現状

後継者不在率50%超の深刻さ

帝国データバンクの調査(2025年)によると、日本企業の後継者不在率は50.1%です。中小企業に限ると51.2%、小規模企業では57.3%にまで上昇します。

中小企業庁の試算では、2025年までに70歳を超える経営者は約245万人に達し、そのうち約127万社が後継者未定です。このまま放置すれば約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるとの推計もあります。

かつて事業承継といえば親族内承継が主流でしたが、近年は同族承継と内部昇格がそれぞれ約3分の1ずつとなり、M&Aを含む第三者承継の比率が年々拡大しています。MBI・MBOは、この第三者承継の有力な選択肢です。

サーチファンドMBIという新たな選択肢

近年、日本でも「サーチファンド」と呼ばれるMBIの新しい形態が広がりを見せています。サーチファンドとは、経営者志望の個人(サーチャー)が投資家の支援を受けて自ら買収先企業を探し、買収後にCEOとして経営を行う仕組みです。北米で50年以上の歴史がある手法で、日本では2020年頃から本格的に広がり始めました。

日本政策投資銀行(DBJ)や日本M&Aセンターなどが出資する「サーチファンド・ジャパン」が日本初の全国版サーチファンドとして組成されています。2025年末時点で日本国内では累計48本のサーチファンドが活動を開始し、サーチ活動を終了した39本のうち30本がM&Aを実現しています。実現率は約77%です。

後継者不在の中小企業に経営意欲の高い外部人材をマッチングする手法として、サーチファンドMBIは事業承継の選択肢を広げています。

MBI・MBO実施時に押さえるべきポイント

デューデリジェンスの重要性

MBI・MBOのいずれを選択するにしても、実施前のデューデリジェンス(DD)は欠かせません。財務DD・法務DD・事業DDを通じて対象企業の実態を正確に把握し、買収価格の妥当性やリスク要因を検証します。

MBOの場合は、経営陣が買い手となるため利益相反の問題があり、独立した第三者による株価算定が特に重要になります。MBIの場合は、外部経営者が内部情報を十分に把握するためにも、DDの過程で得られる情報が経営着手後の意思決定の土台となります。

PMI(統合プロセス)の設計

MBI・MBO成立後に待ち受けるのがPMI(Post Merger Integration:統合プロセス)です。

MBIでは、外部経営者と既存組織の融合がPMIの中心テーマになります。着任後100日間の行動計画(100日プラン)を事前に策定し、まずは従業員との対話や現場視察を優先する。信頼関係なしに改革は進みません。

MBOでは経営陣の連続性がある分、PMI上の摩擦は小さい傾向があります。ただし、新たな株主構成や借入返済計画に伴うガバナンス体制の再構築は必要です。

まとめ

MBI(マネジメントバイイン)は外部の経営専門家を送り込んで企業価値の向上を図る手法、MBO(マネジメントバイアウト)は現経営陣が自ら株式を取得して経営を継続する手法です。

どちらが自社に適しているかは、後継候補の有無・改革の必要度・資金調達力・組織への影響・オーナーの意向という5つの基準で判断できます。後継者不在率が50%を超える時代だからこそ、「自社にはどちらが合うのか」を早めに整理しておくことが、事業を次の世代へつなぐ第一歩です。

よくある質問(FAQ)

Q. MBIとMBOの最大の違いは何ですか?

最大の違いは「誰が経営を担うか」です。MBIは外部から招聘した経営専門家が経営を行い、MBOは現在の経営陣がそのまま経営を継続します。MBIは経営の刷新、MBOは経営の継続を重視するスキームです。

Q. MBIはどのような企業に向いていますか?

技術力やブランド力はあるが経営がうまくいっていない企業、後継者が社内に見つからない企業、不採算事業の抜本的な立て直しが必要な企業がMBIの主な対象です。投資ファンドにとって「経営を変えれば伸びるポテンシャルがある企業」がMBIの好対象となります。

Q. MBOの資金はどのように調達しますか?

一般的には、経営陣がSPC(特別目的会社)を設立し、金融機関からのLBOローン(対象企業の資産やキャッシュフローを担保にした借入)と、PEファンドからの出資を組み合わせて調達します。経営陣自身の自己資金も一部拠出するのが通常です。

Q. MBIで外部経営者を送り込む際のリスクは?

最大のリスクは、外部経営者と既存組織の間に生じる摩擦です。業界慣行や社内文化への理解不足が意思決定のミスにつながる可能性があります。また、オーナーの人脈に依存していた取引関係が経営交代で変化するリスクも存在します。PMI(統合プロセス)の設計で軽減できます。

Q. 中小企業でもMBIは活用できますか?

活用できます。特に近年は「サーチファンド」を通じたMBIが中小企業の事業承継で広がっています。経営意欲のある個人(サーチャー)がファンドの支援で中小企業を買収し、自らCEOとして経営する仕組みです。2025年末時点で日本国内48本のサーチファンドが活動しており、M&A実現率は約77%に達しています。

Q. MBIとLBOの違いは何ですか?

MBIは「誰が経営するか」(外部の経営者)に着目した分類であり、LBOは「どう資金調達するか」(対象企業の資産を担保にレバレッジをかける)に着目した分類です。分類の軸が異なるため、「MBIをLBOファイナンスで実施する」というように、両者が同時に使われることもあります。

Q. MBOとMBIを組み合わせることは可能ですか?

厳密な意味での同時実施は矛盾しますが、実務上は段階的な組み合わせがあります。たとえば、まずMBIで外部経営者を送り込んで企業再建を行い、一定期間後に社内に育った後継者がMBOで経営権を取得するケースです。また、現経営陣の一部が残りつつ外部経営者を迎える「BIMBO(バイインマネジメントバイアウト)」と呼ばれるハイブリッド型も存在します。

この記事を書いた人
ZIDAI Notebook 編集部

新規事業開発支援、生成AIを活用したDX支援を実施する株式会社ZIDAIの事業開発、AI情報メディア「ZIDAI Notebook」。 多くの事業開発やAIを活用した開発を行ってきたBizDev、エンジニアの監修の元、情報をお届けします。